川島君の資料について

前です。

川島君の資料について、
羽鳥様に大変すばらしいお話をいただいている中で、自分も若干コメントします。


まず、課題のところですが、なかなか悩ましいところです。

私は、環境建築(というより環境技術全般)は、数をかけないと効果がないので、
まずは広く普及する話が重要と思います。
1軒だけ省エネ住宅があっても、地球にとっては何の助けにもなりません。


これは、世界スケールに展開してもいえることで、日本でちまちましているより、
中国やインドで行う方がはるかに重要ともいえますが。
世界の住宅の数十%以上にまで普及して、初めて意味があるわけです。
ともあれ、手始めとして日本国内で何割ということになると、
これは高断熱・高気密やエアコンの高効率化といった地道で安価な技術で
普及を目指してくことになります。

一方で、地味な話ばかりでは、人間というのは元気が出ません。
そのため、やはりアドバルーン・花火的なものも重要です。
それ自体は多少インチキ・ハッタリがあったとしても、ほかによい影響があればよいわけです。
その場合、外によい・正しい影響を与えるよう配慮されていることが重要です。
(カリフォルニア・アカデミーは博物館ですから、「見学する子供への教育的効果」でしょうか?)


しかし、最近ではインチキ・ハッタリがめちゃくちゃになっていて、
なんでもいいから「環境」「エコ」とつけたい風潮があります。
後でインチキであることが発覚すると、まじめにやっている環境建築まで
インチキ扱いされてしまうでしょう。
環境問題の解決には、腰をすえた長期の取り組みが必要なので、
短期のブームに乗りたい人間に跋扈されるのは、非常に迷惑であるということです。


なお、27日に見学するゼロ・エミッションハウスというのは、
非常にハイテクですが、それを「感じさせない」地味が建物にわざと設計してあるそうです。
実際に見てみないとわかりませんが、アドバルーンという意味では、
どうかと思います。(数十年後には、ごく一般的な住宅として普及させるとのことですが)


後、プログラムについてですが。
いろいろな人が雑多に入り込めるというのを、
普通の設備設計的に翻訳すると、

「誰もが好きな時間に好きな温度で空調ができる」
「給湯・照明・換気についても、自由に調整ができる」

ということになるので、できるだけ分散で小型の機器を導入していくことになります。
実際、ビルの空調は、最近では大がかりなセントラル空調(従来の設備設計の花形)から、
個別分散のビルマルチ(エアコンの親玉)に移行しつつあります。


環境特論で金田一さんの講義を聞いた人は分かるかもしれませんが、
地中熱のようなシステムが導入されないのは、
「大掛かりでイニシャルコストがかかる」ことが最大の理由ですが、
「設計時に正確な需要と機器容量の検討が必要で、予測が外れた時にリスクが大きい」ということもあります。

川島君の計画は、路面からの熱回収ということで、大掛かりなシステムです。
そのため、現実的には、需要がある程度予測できないと、本当は設計ができません。
また、システムに見合う熱需要がある用途なのか、説得ができないと
「路面で熱は集められるけど、使い道がない」ということになります。


アトリエ自体は変更している時間はないと思うのでメインはそれでよいですが、
併設される施設とか、アトリエを保管する空間とかで、熱需要を想定する必要がありそうです。